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【風立ちぬ】の主人公はクズ?サイコパスと言われる理由についても

映画

2013年に公開された宮崎駿監督による『風立ちぬ』。

ジブリ初の全デジタルデータによる上映作品となり、120.2億円を記録して2013年の興行収入1位となりました。

ところが公開後、主人公・堀越二郎について「クズ」「サイコパス」という声が多く上がっています。

いったいどこがクズなのか?
サイコパスと言われるのはなぜ?

ネットの意見をまとめました。
(作品のネタバレを含んで作成しています。ご注意ください)

【風立ちぬ】主人公・二郎はここがクズ

自分勝手なクズ

『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎は「美しい飛行機を作る」という少年時代からの夢を追求し続けた人物です。

それ自体は素晴らしいことなのですが、自分の夢を追いかけるあまり周りを顧みないところがあります。

周りを巻き込むことへの葛藤や、病弱な妻・菜穂子に対する自己嫌悪などもまったく描かれていないため、「自分勝手な夢追い人」「エゴイスト」「クズ」と呼ばれてしまうようです。

旦那としてはクズ

妻・菜穂子とは少女時代、関東大震災の時に出会っている二郎。

当時の菜穂子はまだ結核にかかっておらず、快活で機転のきくお嬢様でした。

軽井沢で再会した際も震災の時に助けてもらったことを覚えていて、「ずっとお会いしてお礼を言いたかった」と涙ぐむほど。

「二郎さんはお絹と私の王子さまだったの」と、嬉しそうに語る菜穂子はとても純粋で、二郎のことを忘れずに思っていたのです。

しかし、二郎の方は菜穂子を思い出しても、それほど感動した描写はありません。

「ぼくはあなたを愛しています。帽子を受け止めてくれた時(物語冒頭)から」と唐突にプロポーズする二郎ですが、それまでは飛行機飛行機で菜穂子のことを思い出すシーンがまったく無いため、取ってつけたようなセリフになっています。

視聴者にとっても、二郎は飛行機ひとすじの男というイメージが固まっていたため、急に菜穂子との恋愛が挟まれると不自然に感じてしまうようです。

また「結婚してください」と菜穂子に告げる二郎ですが、「はい。でもかならず病気を治します。それまで待っていただけますか」と、軽井沢で結核の治療を優先する菜穂子。

作中でははっきり描かれていませんが、ふたりは籍を入れないまま「婚約者」として恋人関係を続けます。

そして菜穂子の病気はさらに悪くなって行きますが、二郎は飛行機づくりを優先し、なかなか会いにやって来ません。

思い余った菜穂子は病院を抜け出し、軽井沢から名古屋に来てしまいます。

それほど一生懸命な彼女に「ここでいっしょに暮らそう」とあっさり言う二郎。

そして上司・黒川に結婚の仲人を頼みます(急展開)。

「彼女の体を思うなら、できるだけ早く山に戻さなければならないぞ」ととがめる黒川に、二郎は「私が飛行機をやめてつきそわなければなりません」「それはできません」ときっぱり言います(クズ…)。

飛行機製作が二郎にとってはいちばん大事で、何があってもやめないし、菜穂子を「婚約者」としてそばにおくだけで看病もせず、離れにひとり寝かせているだけ…。

それでも「あなたを愛しています」と言う二郎に、「勝手すぎる」「クズ男」という批判が多いようです。

悪気の無いクズ、という言い方がしっくり来ますね。

菜穂子の前でタバコを吸うからクズ

『風立ちぬ』で、とくに気になるのがタバコを吸うシーンの多さ。

二郎だけでなく、設計者はみんな夜も昼もなく設計台にはりつき、ひっきりなしにタバコを吸っています。

二郎と本庄の友情をあらわす小道具としてもうまく使われているタバコですが、もちろん肺病の患者にとっては良い影響はありませんよね。

二郎が結核である菜穂子の前で「タバコを吸いたい」と言うシーンがあります。

当時は誰でもよくタバコを吸っていたとはいえ、菜穂子の体を思うなら目の前で吸わない方がいいですよね。

菜穂子は握っている二郎の手を離したくなくて「ここで吸って」と言いますが、「じゃあやめておくよ」とは言わない二郎。

自分のやりたいことは我慢できない性格なのかもしれません。

2013年8月には、日本禁煙学会が『風立ちぬ』制作担当者に対して「タバコ規制枠組み条例を無視している」と苦言を呈する文書を発表しています。

当時の社会情勢では当たり前のことだったタバコ。

しかし病気の菜穂子の前で吸うことで、二郎のクズっぷりが目立ってしまっています。

宮崎監督の投影だからクズ

宮崎監督の自己投影先とも言われている堀越二郎。

自分の姿の投影であると同時に、理想の自分と女性を描いているとも考えられているようです。

今作の堀越二郎は、「すべてを投げうってでも、自分のやりたいことを貫きたい」という人物として描かれています。

そして理想の女性である菜穂子は、それを肯定し、どこまでも二郎について来てくれる聖女のような存在です。

それは菜穂子に限らず、今までの宮崎監督作品の中で繰り返し描かれてきたヒロイン像でもあります。

「主人公(男)を認めてくれて、引っ張ってくれて、鼓舞してくれて、そのおかげで主人公は好き勝手に生きられて、離れてもずっと思っていてくれる」

そんな都合のいい女性をヒロインとして据えることが多かった宮崎作品。

一方で「女性も守られる存在ではなく強くあって欲しいし、罪を認めても女性によって救済されたい」という願望も入っているとも言われています。

『風立ちぬ』のモチーフと言われている『ファウスト』も、地獄に落ちる主人公が最後は純真な乙女によって救済されるというストーリーでした。

今作の二郎に宮崎監督が投影されているとすれば、「女性に救済されたい」という願望であると同時に「自分の半生を自虐的に」クズとして描いているとも考えられます。

「美しい飛行機を作りたい」という夢のために、家族を犠牲にしている二郎。

それは宮崎監督の自戒も含まれているのかもしれませんね。

二郎は魅力的なクズ

クズ好きなファンからは「魅力的」と言われている二郎。

一見普通の地味メガネに見えますが、かなり魅力があるようです。

面食いでクズ

出会いの時から、菜穂子の可愛らしさに心を奪われていたと思われるような描写があります。

また軽井沢で再会し、結婚を申し込んだ時も「僕はあなたを愛しています。帽子を受け止めてくれた時から」とひとめぼれだったことを明かしています。

飛行機のことばかりで女性にあまり興味があるようには見えない二郎ですが、可愛い女の子への関心はしっかりあるようですね。

【風立ちぬ】堀越二郎がサイコパスと言われる理由

サイコパスとは

反社会的人格の持ち主をあらわす言葉。

「精神病質者」。

病名としては「反社会性パーソナリティ障害」に該当する。

特徴的な性格は「冷酷」「無慈悲」「尊大」「良心の欠如」「罪悪感の薄さ」など。

一般人と比べて大きく偏った考え方や行動をとり、対人コミュニケーションに支障をきたすパーソナリティ障害の一種。

他者への愛情や思いやりの欠如や自己中心的な考え方、道徳観念・倫理観・恐怖を感じないといった一面もあります。

近年では映画やドラマ、アニメの影響で「サイコパス=猟奇殺人者」というイメージを持たれがちですが、実際に犯罪までおかす人は稀なよう。

仕事で優れた成果を出す人、とくに経営者や医者などにも多いと言われています。

戦闘機だけを愛し人には興味がないから

前述の「他者への愛情や思いやりの欠如や自己中心的な考え方をする」に当てはまりそうな二郎。

菜穂子を「愛している」というセリフはあるものの、看病はせず、目の前でタバコを吸ったりなど、行動はほとんど伴っていません。

キスシーンもそれなりにあるのですが、あふれる愛情からキスするというよりは、ただの動作のようなキスなので、余計にサイコパスさが際立っています。

声優が棒読みだからサイコパスに見える

二郎役の声優は『エヴァンゲリオン』シリーズの監督、庵野秀明さん。

もちろん声優は初挑戦でしたが、宮崎監督のお墨付きを貰っています。

しかし、やはりファンにとっては不自然で棒読みに聞こえてしまったよう。

その棒読みっぷりのせいで「サイコパス」に見えるという意見があるようです。

宮崎監督は「(庵野は)現代でいちばん傷つきながら生きてるんですよ」「それが声に出てるので」「それが僕はいいと思ったんですよ」と絶賛しています。
(『風立ちぬ』ジブリの教科書18より)

庵野監督も「自分の好きなこと」を貫いているクリエイター。

堀越二郎に重なる部分がありますよね。

でも感情を捨てたように聞こえるのは役作りではなく、単純に声優に不慣れだからと思われます。

一方で「絶妙なキャスティング」と好評な声もあるようです。

「二郎のサイコパスっぷりに合っている」という人も。

庵野さんの棒読み演技が、かえって二郎のキャラを立たせているという一面もあるようです。

美しさに固執しすぎでサイコパス

物語序盤、二郎は友人・本庄と定食屋でサバの味噌煮を食べています。

熱く語る本庄の話を聞かず、サバの骨を取り出し「美しいだろう。素晴らしい曲線だと思わないか」とうっとりしています。

そして教室へ骨を持って帰り、ひとり方眼紙や計算尺で何やら熱中。

「本庄!我発見せりだ!サバの骨と同じ曲線がNACAの企画にあるぞ!」とのんきなことを言っています。

この「サバの骨」のシーンは宮崎監督の創作で、ジブリのスタッフの中にサバ好きな人がおり「サバは美味いから好きです」と言って骨を並べていたそう。

その骨の曲線が、まさに飛行機の翼型と同じだったため、映画に反映させたとか。

美しさに徹底的にこだわる姿勢が素晴らしい飛行機を生み出していたのですが、一般人からすれば「大きく偏った考え方」にも見えてしまいます。

秀才と言われる頭脳を持ちながらも、美しいものにこだわりすぎる性格がバランスが悪く、「サイコパス」と呼ばれてしまうのかもしれませんね。

葛藤していないからサイコパス

菜穂子や周りを顧みず、自分の好きなことだけを貫いている二郎。

それに対する反省や後悔、葛藤、苦悩といった感情はまったく描かれません。

それが人間味がなく、感情の薄いサイコパスと言われる理由のようです。

女ばっかり見てるサイコパスの恋

見方を変えれば、二郎と菜穂子の恋愛物語ととらえることもできる今作。

たしかに、二郎は菜穂子のほかの女性には、ほとんど興味がないようです。

作中でも女性キャラは少なく、登場する二郎の妹や菜穂子の家の女中、黒川夫人などもほとんどストーリーには関わってきません。

ある意味菜穂子にだけは出会いからずっと執着を持ち続けている…ということから、偏執的な「サイコパスの恋」という評価も納得ですね。

サイコパスというよりはダメ男

「反社会性パーソナリティ障害」や「自己愛性パーソナリティ障害」とも思える二郎の性格。

しかし実際は、「ただのダメ男では?」という意見もあるようです。

見た目も地味だし、甘い言葉で優しくしてくれるわけでもなく、弁舌が立ってカリスマ性があるわけでもありません。

サイコパスは、人を強烈に惹きつける魅力的な一面もあると言われており、二郎はその点は当てはまらないように見えます。

物語終盤、病が重くなった菜穂子は誰にも相談せず、ひとり山の療養所へ戻っていきます。

二郎、加代(二郎の妹)、黒川夫人にあてた手紙にそのことを書いていたようですが、二郎はそれを知っても飛行機づくりを優先し、菜穂子を迎えには行きませんでした。

そして、それが彼女との今生の別れになります。

サイコパスの特徴的な性格である、「冷酷」「無慈悲」「罪悪感の薄さ」「他人への思いやりの欠如」が見られる反面、「ただのクズ男」ともとらえることができ、二郎の好き嫌いが大きく分かれる理由でもあるようです。

まとめ

『風立ちぬ』の主人公・堀越二郎は「クズ」「サイコパス」という声が多く上がっている。

クズと言われる理由は、自分勝手・旦那としてはクズ・菜穂子の前でタバコを吸うから・宮崎監督の投影だからというもの。

ただクズでも魅力的という声もある。

サイコパスと言われる理由は、戦闘機だけを愛し人には興味がないから・美しさに固執しすぎだから・葛藤していないからというものがあげられる。

また、声優が棒読みだからサイコパスに見えるという意見と、サイコパスというよりはダメ男という意見もある。

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