米林宏昌監督の2作目の作品となる「思い出のマーニー」。
ふたりの少女の心の交流と成長を描くジブリ映画です。
他のジブリ映画とは少し違った「女の子のための映画」とあって、繊細な作り込みが楽しめる作品となっています。
ところで思い出のマーニーのヒロインの一人、杏奈はジブリには珍しく暗く、心を閉ざした女の子です。
あろうことか、とある女の子に「太っちょ豚」と言い放ちます。
放送ギリギリ!というかんじの暴言ですね^^;
ジブリヒロインとは思えない、この最悪なセリフの前後にいったい何があったのか?
検証してみました!
思い出のマーニー「太っちょ豚」の名前は信子
思い出のマーニーで一番不憫なキャラだよな。太っちょ豚って pic.twitter.com/PEnq7zDu7y
— ナ太郎(IQ3) (@sogokichi) September 11, 2017
「太っちょ豚」と言われてしまうのは、杏奈よりひとつ年上(13歳)の女の子。
名前は「信子」といって、杏奈の静養先である北海道の町に住んでいます。
なかなかリーダー的な性格のようで、ひとりで知らない町にやって来た杏奈にいろいろ話しかけてくれる面倒見の良いところもあります。
ただ、本人の容姿はというと・・・。
たしかにブタさ・・・(失言)。
杏奈は外国の血が入っているという設定+主人公補正があるため、ある程度美人に描かれるのも分かりますが、その違いを出すためか、信子は必要以上にモブ顔にされているような気がします。
ヒロインは可愛く!それ以外の女子はそこそこに!という制作者の強い意図を感じるところですw
杏奈が信子に太っちょ豚といった理由は?
しかしこの信子ちゃん、脇役でありながら、素晴らしい神対応を魅せてくれるコミュ二ケーションモンスター。
コミュ障がちな杏奈のコンプレックスをまぶしく照らす存在となっています。
ごみ拾いも嫌がらず率先して仕切り、ややおせっかいで無神経な面もあるものの、しっかり者の頼れる女の子という印象です。
七夕祭りの夜、よそ者の杏奈にも気を使って話しかけてくれますが、それが素直になれない杏奈の劣等感を煽ってしまいます。
さらに、杏奈の瞳は少し青みがかっているのですが、それに気づかれてしまいます。
目の色のことは杏奈の最大の地雷で、この台詞を吐いてしまいます。
杏奈「いい加減ほっといてよ、太っちょ豚!」
はい、最低ですね。
容姿をディスるのはいちばんしてはいけません。
普通面と向かってこんなこと言われたら、女同士でも大ゲンカですよね。
ところがここからが信子ちゃんのすごいところ。
対人スキル全振りの神対応がこちら。
ブタと言われて一瞬顔がひきつる信子ちゃんですが、さらっと下のセリフ。
信子「ふーん、普通の意味が分かったわ。
でも。かわいそうに、普通のフリをしても無駄。
だって、アンタは“あんたの通り”に見えているんだから」
杏奈の核心をズバリとつく一言のあと、
信子「はいっ!これで終わりにしましょ」
すごい!13歳でこの貫禄(体格ではなく)。
罵倒された悔しさを見せず、その場でピシャリと返して終わりにできる度量。
ケンカをふっかけた杏奈は何も言い返せず、その場から逃げ出してしまいます(最悪)。
それでも信子ちゃんも13歳の女の子。
心は深く傷ついていたようで、その夜、信子ちゃんの母親が杏奈の滞在している家に怒鳴りこんできます。
信子の母「カッターをちらつかせた」脅しの嘘はなぜ?
→続き 信子のお母さん・角屋夫人は、「かどっこやしき」に住んでいると書かれていたからなんですって😮
ちなみに信子さんの名前は「何となく」だそうです。原作ではサンドラという意地悪な女の子です🤔 #ジブリ#思い出のマーニー pic.twitter.com/zRrDObHj3X— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) July 14, 2017
さすがの信子も「太っちょ豚」はこたえたようで、家に戻ってから泣いてしまったようです。
それを見た母親(PTA会長チック)は、杏奈の親戚の家まで押しかけ、彼女のせいだとまくしたてます。
信子の母「そのうえカッターをちらつかせたなんて!」という、おだやかでないセリフも。
もちろん、私たち視聴者は杏奈がカッターを持ち出してなんていないことは知っていますが、悪いのはどう考えても「太っちょ豚」と言った杏奈の方ですよね。
ただここで「?」となるのは、あの懐の大きい信子が、いくらケンカしたといっても「杏奈にカッターで脅された」なんて嘘を言うでしょうか?
しっかり者で面倒見の良い信子が、わざわざそんなことを言って母親に自分は悪くないというアピールをするとも思えません。
信子は、杏奈が色鉛筆を削るためのカッターを持ち歩いていることを知っています。
そのことを母親に言ったことがあったのかもしれません(悪気なく)。
信子の母親は杏奈のことを言うついでにそのことを思い出し、怒りにまかせて話を盛った可能性もありますね。
それにしても、絵を描くためとはいえ、ポケットにカッターをしのばせている杏奈は今ならちょっとヤバい子と思われてしまいそう。
そして物語の最後、杏奈が信子に暴言を謝罪するシーンがあります。
頭を下げる杏奈に対し、信子は・・・、
信子「来年は、ごみ拾いをするのよ」
「太っちょ豚」と言われたことを許し、謝罪を受け入れ「来年またおいで」と約束してくれる信子ちゃん(神か)。
なんだか信子の方がジブリヒロイン向きなんじゃ・・・と思ってしまいます。
「思い出のマーニー」では杏奈が主役なので、徹底的に杏奈アゲの演出がされていますが、脇でキラリと光る信子の名シーンにも注目してみてくださいね。
まとめ
杏奈は作中で療養に行った先の北海道で仲良くしてくれた女の子に「太っちょ豚」と暴言を吐く。
太っちょ豚といったのは、最大の地雷である目の色のことを言われたから。
その場では大人の対応を見せた信子ちゃんは、やはり悲しかったのか家に帰り母親に杏奈のことを話してしまう。
母親は怒鳴り込んできて、杏奈がカッターで脅したとも言う。
信子は杏奈が絵を描いていて色鉛筆をカッターで削る様子を見ていて、カッターを持っていたことを知っていた。
わざわざ「カッターで脅された」と嘘をついたとは思えないが、杏奈がカッターを持っていたことは話していた可能性がある。
ヒートアップした信子の母親が勢い余って話を持った可能性が高い。
物語の最後、杏奈は信子に謝罪して仲直りをしている。
「思い出のマーニー」を見逃してしまった人、もう一度みたいなあ・・・という人。
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